「最近、なんか変わったな」
そう感じ始めたのは、いつごろのことでしょう。
呼んでも振り返らなくなった。夜中にぐるぐると同じ場所を回っている。以前はできていたトイレを、最近よく失敗する。
「老化かな」「病気かな」
いろんな気持ちが混ざって、この記事にたどり着いた飼い主様へ。
愛犬ちゃんが認知症になったとしても、それはあなたのせいではありません。それどころか、そこまで元気に長生きさせてあげられた証でもあります。まずは、自分自身をちゃんと褒めてあげてください。
この記事では、認知症(認知機能不全症候群・CCD)の初期サインから末期症状・余命の目安、夜間症状への向き合い方、サプリや薬の選択肢、そして「安楽死」まで考えてしまった飼い主様の気持ちへの向き合い方まで、できるだけ正直にお伝えします。
老犬の認知症(CCD)とは?「痴呆」との違い・何歳から・原因と発症割合

「認知症」と「痴呆」は同じ意味です
老犬の認知症は、正式には認知機能不全症候群(Canine Cognitive Dysfunction:CCD)と呼ばれています。「痴呆」「老犬痴呆」は同じ状態を指す言葉で、医学的な正式名称がCCDに統一されたものです。この記事では「認知症」を中心に使いながら、「痴呆」も同じ意味の言葉として交えてお伝えしていきます。
何歳ごろから始まる?
老犬の認知症は、一般的に小型犬では11〜13歳以降、大型犬では8〜10歳以降から見られることが多いとされています。ただし個体差が大きく、「急に始まった」と感じる飼い主様も少なくありません。
犬種によっても傾向があります。柴犬は認知症になりやすい犬種として知られており、比較的早い年齢からサインが出るケースが報告されています。チワワをはじめとする超小型犬は長寿な子が多いぶん、高齢期に認知症と向き合う機会が増えることもあります。
「うちの子はまだ若いから大丈夫」と思っていた矢先に症状が出て、驚いた飼い主様もいらっしゃいます。早めに知識を持っておくことが、いざというときの落ち着きにつながります。
なぜ認知症になるの?原因と脳内の変化
老犬の認知症の主な原因は、脳の老化による神経細胞の変性です。人間のアルツハイマー型認知症と同様に、脳内にアミロイドβというタンパク質の異常な蓄積が起きることで、神経回路が正常に働かなくなっていきます。脳への血流低下や酸化ストレスの蓄積、神経伝達物質のバランスの乱れも関係していると考えられています。
「年を取れば誰でもなるの?」と心配になる飼い主様もいらっしゃるでしょう。なりやすい子となりにくい子はいますが、十分な高齢になればほとんどの犬で脳の老化は進みます。予防や進行を遅らせることはできても、完全に防げるものではありません。しかし、それは誰のせいでもないのです。
発症割合はどのくらい?
ある研究では、11〜12歳の犬の約28%、15〜16歳では約68%に認知症の症状が見られるというデータがあります※1。また、高齢犬の行動変化を調査した国内の研究でも、加齢に伴う認知機能の低下が広く確認されています※2。年齢を重ねるほど発症率は上がっており、長生きの愛犬ちゃんを持つ飼い主様にとって、認知症はそれほど珍しい病気ではありません※3。
「うちだけじゃなかったんだ」と、少し肩の荷が下りる飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。同じ思いを抱えながら、それでも毎日愛犬ちゃんを支え、ともに過ごす飼い主様が、たくさんおられるのです。
「これって認知症?」初期症状のチェックリスト📋

「病院に連れて行くべきか、まだ様子を見るべきか」
迷っている飼い主様のために、自宅でできるチェックの方法をご紹介します。
DISHAAチェックで早期発見を✅
認知症かどうかを見極める手がかりとして、獣医学的に広く使われている評価指標が「DISHAA(ディシャ)」です※4。以下の6つのカテゴリーで症状を確認してみましょう。
| DISHAA | 主なサイン |
|---|---|
| D — 見当識障害 | 家の中で迷う・部屋の角にはまって出られない・家具にぶつかる |
| I — 社会的交流の変化 | 飼い主様を認識しなくなる・甘えなくなる・または過度に後追いする |
| S — 睡眠サイクルの乱れ | 昼夜逆転・夜中に活動する・夜鳴き |
| H — 排泄の失敗 | 覚えていたトイレの場所を忘れる・家の中で粗相をする |
| A — 活動量の変化 | ぼーっとしている時間が増える・散歩に興味を示さなくなる |
| A — 不安 | 意味もなく不安そうにする・くるくると同じ場所を回り続ける |
📌受診の目安
3つ以上の項目に当てはまる場合は、老化現象と決めつけず、かかりつけの動物病院に相談してみてください。「こんなことで行っていいのかな」と遠慮しなくて大丈夫です。早めに相談することが、愛犬ちゃんのためになります。
こんなサインも見逃さないで⚠️
チェックリスト以外にも、認知症の初期によく見られるサインがあります。
くるくる・ぐるぐる回る(旋回運動)🌀
同じ方向に円を描くように歩き続けたり、狭いスペースでぐるぐると回り続けたりします。
脳の一部が正常に機能しなくなることで起きる症状で、止めようとするとかえって混乱させてしまうことがあります。
吠える・鳴く(理由のわからない)📢
以前は吠えなかったのに突然吠えるようになった、意味なく遠吠えをするようになった。そんな変化が見られることがあります。
食欲の変化(食べない・逆によく食べる)🍚
食欲がなくなる一方で、満腹感を感じにくくなって食べ過ぎてしまうケースも。「さっき食べたばかりなのにまた要求する」という行動も認知症のサインのひとつです。
飼い主様を認識できなくなる🤔
長年一緒に暮らしてきたのに、飼い主様の顔や声に反応しなくなることがあります。これは、経験した飼い主様なら誰でも胸が痛くなる変化だと思います。
ただ、愛犬ちゃんはあなたのことを完全に忘れたわけではないと言われています。声をかけ続けてあげてください。きっと伝わっています。
動物病院での診断🏥
認知症の確定診断には、他の病気との鑑別(類症鑑別)が必要です。甲状腺機能低下症・脳腫瘍・内耳疾患・関節痛など、似た症状を引き起こす病気は少なくありません。動物病院では問診・神経学的検査・血液検査・場合によってはMRIやCT検査によって診断が行われます。
「老化だから仕方ない」と思わず、気になるサインが出たら早めに受診してください。原因がわかるだけで、飼い主様の気持ちがすこし楽になることもあります。
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認知症の「末期症状」と余命|最期を前に知っておきたいこと

「末期症状」という言葉を検索されている飼い主様は、今まさに愛犬ちゃんの大きな変化を目の前にして、不安や戸惑いなどいろんな気持ちを抱えていらっしゃるのではないでしょうか。
そんな気持ちに向き合いながら、それでもこの子のために何かしてあげたいと思っているあなたへ。認知症の進行段階と余命の目安について、できるだけ正直にお伝えします。知ることは、残された時間をこの子らしく過ごさせてあげるために必要なことだと思うからです。
認知症の進行段階
老犬の認知症は、一般的に以下のような段階をたどります。個体差が大きく、すべての犬が同じ経過をたどるわけではありませんので、あくまでも参考としてご覧ください。
| 段階 | 主な症状 | 目安の時期 |
|---|---|---|
| 初期 | 夜鳴きが増える・トイレを失敗することがある・反応が鈍くなる | 症状が出始めてから数か月〜1年程度 |
| 中期 | 昼夜逆転・徘徊・くるくる回る・飼い主を認識しにくくなる・粗相が増える | 初期から6か月〜数年 |
| 末期 | 寝たきり・食事を飲み込めない・体重の著しい減少・痙攣・発作 | 個体差が大きい |
末期症状とは
末期に近づくにつれて、以下のような症状が現れることがあります。
寝たきりになる・歩けなくなる
自力で立つことが難しくなり、ほとんどの時間を横になって過ごします。床ずれ(褥瘡)が起きやすくなるため、体位変換や体圧分散マットが大切になります。「何もしてあげられない」と感じるかもしれませんが、2〜3時間おきに体を向け変えてあげることは、この子への大切なケアです。
📖寝たきりになってしまった愛犬のお世話のコツを解説しています🐶💤
📖床ずれマットやベッドの選び方を詳しくご紹介しています🐕💛
食べなくなる・飲み込めなくなる
食欲がなくなるだけでなく、嚥下(えんげ)機能が低下して水や食事をうまく飲み込めなくなります。誤嚥性肺炎のリスクも高まるため、食事の形態や与え方を獣医師に相談しながら進めましょう。
📖犬ちゃんがご飯を食べないときの対処法は、こちらの記事をご覧ください🍚🐕
体重が急激に落ちる・痩せる
食事量の減少と筋肉の萎縮が重なり、体重が急速に減っていきます。体重は週1回程度記録しておくと、獣医師への相談に役立ちます。
痙攣・発作・震え(てんかん様症状)
脳の変性が進むと、てんかん様の発作や全身の震えが起きることがあります。
初めて見たとき、飼い主様がパニックになるのは当然のことですが、まずは落ち着いてぶつけると危ないものを周囲からとり除いてあげてください。発作の時間と様子を動画に記録しておくと、後で獣医師に伝えやすくなります。
鳴き声が変わる・遠吠えが増える
末期になると、夜中に遠吠えのように鳴き続けたり、うめくような低い声に変わることがあります。鳴き声の変化に気づいたら、痛みや不快感がないか獣医師に確認してもらいましょう。
余命の目安
「余命はどのくらいですか?」は、飼い主様が最も聞きたくて、最も聞くのがつらい質問だと思います。
老犬の認知症は、認知症そのものが直接の死因になることは多くありません。多くの場合、嚥下機能の低下による誤嚥性肺炎、食欲不振による衰弱、他の臓器疾患との併発などが、最期に向かう経過に関わってきます。
「認知症の診断を受けてから何年生きられるか」は、正直なところ、誰にも断言できません。1〜2年という子もいれば、穏やかなペースで数年間過ごす子もいます。それだけ個体差が大きく、この子だけの歩みがあるということです。
心の準備をするうえで、余命を知りたい気持ちはとてもよくわかります。ただ、目の前のこの子が今どんな状態にあって、何に困っているのかを獣医師と一緒に考え、対応してあげること。それが、愛犬ちゃんのために一番できることだと思います。
「最期のとき」に向けて|今できること
「治す」ことを目標にするのではなく、「苦しくないように、穏やかに過ごさせる」ことを目標にする。その視点の転換で、飼い主様自身も、肩の力がすっと抜け、心にすこしだけ余白が生まれることがあります。
最期を前に飼い主様にできること🐾
- 痛みや不快感がないか、獣医師と定期的に確認する
- 床ずれを防ぐため、2〜3時間おきに体位を変える
- 食事が難しくなったら、流動食や水分補給の方法を獣医師に相談する
- 「そばにいること」それ自体が、愛犬ちゃんにとっての大きな安心になる
体が弱っていても、飼い主様の声や温もりは伝わっています。どうかそばで、話しかけてあげてください。
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認知症による「夜鳴き・寝ない」夜|昼間のケアで変えられること🐕

「また鳴いてる……」と夜中に目が覚める日々が続いているとしたら、飼い主様の体も心もずいぶん疲れていると思います。
この章では、認知症特有の夜間症状のしくみと、日中のケアで夜をすこしでも穏やかにするためのアプローチをお伝えします。
📖薬・漢方・環境整備・飼い主様のメンタルケアなど、夜鳴き全般の対策については、こちらの記事であわせてご覧いただけると、より多くのヒントが見つかると思います🐶📢
なぜ認知症の犬は夜に寝られないのか🌙
認知症による夜間症状の根本にあるのは、脳内の体内時計(概日リズム)の障害です。健康な犬の脳では、日中に活動し夜に眠るというリズムが自然に維持されています。ところが認知症が進むと、このリズムを調節する仕組みが正常に働かなくなります。結果として昼夜が逆転し、昼間ずっと眠って夜中に活動・鳴くという状態になっていきます。
知っておいてほしいこと💛
愛犬ちゃんはあなたを困らせたいわけではありません。ただ、脳が昼と夜を区別できなくなっているのです。そう理解することで、深夜の鳴き声に対するつらさが、すこしだけ変わることがあります。
昼間のケアが夜間症状を変える🩹
認知症の夜間症状には、日中の過ごし方が大きく影響します。今日からできることを、いくつかご紹介します。
朝の日光浴を習慣にする☀️
朝の自然光は、脳内の体内時計をリセットするうえでとても重要です。天気の良い日は10〜15分、日当たりのよい場所に連れ出すだけでも、昼夜逆転の改善につながることがあります。難しい日はカーテンを開けるだけでも。小さな習慣が、夜の穏やかさを少しずつ引き寄せてくれます。
日中にしっかり活動させる🐕
日中に体を動かし、脳に刺激を与えることが、夜の深い眠りにつながります。無理のない範囲での散歩、食べ物を隠して鼻で探させる「ノーズワーク」、簡単なコマンドの練習などが有効です。「もう散歩は難しい」という子でも、においのあるおもちゃを近づけるだけで脳への刺激になります。
昼間に長く眠らせすぎない💤
日中ずっと眠らせていると、夜に眠れなくなります。定期的に声をかけて起こす、軽くなでて覚醒を促すなどの工夫で、昼夜のメリハリをつけましょう。
夕方以降は静かに過ごす🤫
夕方以降は照明を少し落とし、静かな環境を作ることで「夜が来た」というシグナルを送ります。夕食後の激しい遊びや刺激は避けるようにしましょう。
動物病院で相談できる薬・サプリ・安定剤の選択肢

「生活を整えても夜は改善しない」「認知症の進行を少しでも遅らせたい」
そんな飼い主様に向けて、動物病院で相談できる医療的な選択肢をご紹介します。
「薬に頼るのは負けな気がして」とおっしゃる飼い主様もいらっしゃいます。しかし、愛犬ちゃん自身の苦しさを和らげるための選択肢として、どうか前向きに検討してみてください。
いずれも必ず獣医師の診察・処方のもとで使用してください。人間用の薬・市販のサプリメントを自己判断で与えることは大変危険です。
認知症の進行を遅らせるサプリメント💊
認知機能の維持・改善に関して、近年いくつかの栄養素が注目されています。
DHA・EPA(オメガ3脂肪酸)
神経の炎症を抑え、脳の老化を遅らせる効果が期待されています。シニア犬向けの療法食やサプリメントに広く含まれており、取り入れやすい栄養素です※8。
MCTオイル(中鎖脂肪酸)
加齢した犬の脳はブドウ糖をエネルギーとして利用する能力が低下することがあります。MCTオイルから生成されるケトン体が脳の代替エネルギーとして働くとされており、認知機能の改善が期待されています。消化器への影響を防ぐため、少量から始めて様子を見てください。
抗酸化物質(ビタミンE・ビタミンCなど)
脳の老化に酸化ストレスが関わるとされており、抗酸化物質の補給が有効と考えられています。
メラトニン
体内時計の調節に関わるホルモンで、昼夜逆転・夜間の鳴きへの改善効果が報告されています。使用前に必ず獣医師に相談してください。
SAMe(S-アデノシル-L-メチオニン)
神経伝達物質の合成を助け、脳細胞の活動をサポートする成分です。活動性や周囲への関心を高める効果が報告されています※7。
ジルケーン(α-カソゼピン)
ミルク由来の成分で、不安をやわらげリラックスさせる効果があります。他の薬との併用が難しい場合にも使いやすい選択肢のひとつです※7。
夜鳴き・不安・痙攣に対応する処方薬
塩酸セレギリン(アニプリル等)
脳内のドーパミン量を増やす働きがあり、米国ではCCDの治療薬として認可されている薬です。日本でも獣医師の判断のもとで使用されることがあります※7。
フェノバルビタール(フェノバール)
痙攣・発作・強い興奮を伴うケースで使われることがあります。定期的な血液検査による管理が必要です。
精神安定剤・抗不安薬
強い不安や興奮から夜鳴きが続いている場合に処方されることがあります。「薬に頼っていいのだろうか」と迷う気持ちはよくわかります。しかし薬は、愛犬ちゃんが夜中に感じている不安や混乱をやわらげ、穏やかな気持ちで過ごさせてあげる助けになります。副作用が心配な場合は、使用頻度などを獣医師とよく相談しましょう。
漢方薬(抑肝散など)
副作用が比較的少なく、穏やかに興奮を鎮め睡眠の質を改善する効果が期待されています。ただし人間用の市販品を自己判断で与えることは厳禁です(甘草による偽アルドステロン症のリスクがあります)。必ず獣医師に相談してください※5。
今日からできる環境づくりと介護のコツ

「特別なことは何もできていないけど、何かしてあげたい」
そんな飼い主様のために、今日からすぐに始められる工夫をご紹介します。
徘徊サークルを用意する(市販品・手作りどちらでも)
認知症の犬がぐるぐると同じ場所を回り続けることを「旋回運動」と言います。止めようとするとかえって混乱させてしまうことが多いため、安全にぐるぐるできるスペースを作ってあげるのが現実的な対応です。
サークルは購入することもできますし、手持ちのもので手作りすることもできます。小型犬であればビニールプールをそのまま使う方法や、人間の赤ちゃん用サークルを活用する方法もあります。
手作りする場合は、以下の材料を参考にしてみてください。
📌必要なもの(100均・ホームセンターで揃う)
- ペット用フェンス・ワイヤーネット(ダイソー・セリアなどで販売)または段ボール箱
- 結束バンドまたはガムテープ
- 緩衝材(プチプチ・タオル・スポンジなど)
- ノンスリップマット(床面用)
- 重しになるもの(段ボール箱で作る場合、外側を支えるため)
作り方のポイント
フェンスやワイヤーネットを円形に組み合わせ、直径80〜100cm程度のサークルを作ります。内側に緩衝材を貼り付けて、頭や体をぶつけても怪我しないようにしましょう。段ボール箱をつなぎ合わせる場合は、外側を重しになるもので支えて倒れないようにしてください。床面にはノンスリップマットを敷いて転倒を防ぎます。旋回の方向(右回りか左回りか)を観察して、その方向に合わせた形に整えるとより安心です。
滑り止め・段差の解消
認知症の犬は足元への注意が散漫になりがちです。フローリングや廊下にノンスリップマットを敷くだけで、転倒・骨折のリスクをぐっと減らせます。
ソファや段差には低めのスロープを設置してあげましょう。
トイレの工夫
認知症が進むと、トイレの位置を忘れたり、間に合わなかったりすることが増えてきます。
- トイレシートを普段よりも広めに、多めに敷く
- 段差のない低いトイレトレーに変える
- 以前よりもトイレの数を増やし、生活空間の近くに置く
- 粗相しやすい場所にあらかじめシートを敷いておく
「また失敗して……」と感じたとき、叱りたくなることもあるかもしれません。しかし認知症の子には、叱られる理由がわかりません。叱られた不安がかえって症状を悪化させることもあります。穏やかに片付けてあげてください※6。
📖老犬が暮らしやすい環境づくりについては、こちらの記事でご紹介しています📐🐕
ご飯・食事の工夫
食べない場合
食欲が落ちたときは、フードを少し温めて香りを立たせる・種類を変えてみる・少量ずつ数回に分けて与えるなどの工夫を。末期に近づくと嚥下が難しくなるため、流動食への移行も視野に入れて獣医師に相談してください。
📖ご飯を食べやすくする工夫や受診の目安をご紹介しています🍚🐕
食べすぎる場合
満腹感を感じにくくなって何度も催促する子には、1回の量を減らして回数を増やす「分割給餌」が有効です。カロリーをコントロールしながら、「食べた」という満足感を得やすくする工夫です。
散歩・五感への刺激
「もう散歩は難しい」という子でも、外の空気・風・においを感じるだけで脳への刺激になります。抱っこやカートでの短いお散歩でも十分です。庭や玄関先に出るだけでもいい。
「今日も一緒に外に出られた」という小さな積み重ねが、愛犬ちゃんの脳と、飼い主様の心の両方を豊かにしてくれます。
「安楽死」を考えてしまった飼い主様へ💚

「安楽死」という言葉を検索した自分を、責めていませんか。
夜も眠れない日が続いて、あの頃の元気にな姿に戻ることはないと知りながら、終わりの見えない介護に疲れ果ててしまうこともあるでしょう。
「このまま無理に生かし続けることは私の身勝手で、この子自身は解放されたいのかもしれない」と考えてしまう、それは、愛情が足りないのではなく、それだけ深く愛していて、深く疲れているということです。
どうか、自分を責めないでください。
安楽死を検討するとはどういうことか
獣医療における安楽死(安楽殺)は、苦痛をこれ以上与え続けないための、最後の選択肢として存在します。QOL(生活の質)の評価という観点から、以下のような状態が続いている場合に、獣医師と話し合うことが選択肢になります。
- 痛みや苦しみが医療でもコントロールできない状態が続いている
- 自力での食事・水分摂取が不可能になっている
- 痙攣・発作が頻繁に起きており、苦痛が大きい
- 飼い主様の介護が限界を超えており、犬自身の環境が著しく悪化している
大切なのは、「この子が今どれだけ苦しいか」を基準に考えることです。
かかりつけの獣医師に、今の状態を正直に話してみてください。一人で抱え込まず、専門家と一緒に考える問題です。
まずは「休める場所」を探すことから
安楽死を考えるほど追い詰められている飼い主様に、まずお伝えしたいのは、老犬ホームのショートステイという選択肢です。
数日間だけ預けて、飼い主様が眠れる夜を取り戻すことは、「逃げ」ではありません。休んだ飼い主様が、また愛犬ちゃんのそばに笑顔で戻ってくる。それが「続けられる介護」です。
結びに|「長生きしてくれてありがとう」という気持ちで
認知症という診断を受けたとき、「あのとき何か違うことをしていたら」「もっと早く気づいていれば」と思う飼い主様は多いと思います。
私もかつて、同じ気持ちになりました。でも同時に、だんだんと赤ちゃんに戻っていくような愛犬の姿に、胸がきゅっとなるような可愛さも感じていました。
できないことが増えていく中にも、老犬ならではの愛おしさがある。そのことに気づいてから、介護の景色が少し変わった気がします。
愛犬ちゃんが認知症になったとしても、それはそれだけ長く、愛情深く生きてきた証です。あなたが大切にしてきたからこそ、この年齢まで生きてくれました。
認知症は完治する病気ではありません。進行を少し遅らせることはできても、元通りにはなりません。それでも、今この子と過ごせる時間は、かけがえのないものです。
「昔みたいに」を求めるより、今のこの子のそばにいること。それが、最期まで寄り添うということだと思います。
愛犬ちゃんは、あなたのそばが一番安心できる場所です。今日もそばにいてくれて、ありがとう。
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【参考文献・引用元】
- Neilson JC, Hart BL, Cliff KD, Ruehl WW. Prevalence of behavioral changes associated with age-related cognitive impairment in dogs. J Am Vet Med Assoc. 2001;218(11):1787-1791.
- 水越美奈・松本千穂・脇坂真美「高齢犬の行動の変化に対するアンケート調査」日本獣医生命科学大学獣医学部獣医保健看護学科
- 齋藤厚子「【獣医師監修】うちの子が認知症に!?ペットの認知症との付き合い方」公式 ウィズペティ倶楽部 会報誌(2025年5月)
- 認知機能不全症候群セルフチェック(監修:麻布大学 齋藤弥代子先生・久世明香先生)
- 入交眞巳「犬の認知機能不全症、どのように対処していますか?」
- 東京都動物愛護相談センター「私の動物介護の体験談」ワンニャンとうきょう
- Royal Veterinary Center「犬認知症候群: Dementia in Dogs」
- Gary Pan et al. “Dietary supplementation with a nutrient blend containing arginine, antioxidants, B vitamins and fish oil demonstrated cognitive enhancement in old dogs” Purina Research






