酸素室は自宅でも使えると聞いたけれど、本当に必要なのか、どんな効果があるのか、まだよくわからない。
そう感じている方のために、この記事では酸素室の基本的な仕組みや役割、検討するタイミング、自宅で使う際に知っておきたいことをわかりやすくお伝えします。
この記事を読んでいただく前に、ひとつだけ大切なことをお伝えします。
愛犬の呼吸がいつもと明らかに違う、苦しそうだと感じたときは、酸素室を探すよりも先に、かかりつけの動物病院へ連絡してください。酸素室はあくまで呼吸を「支える」設備であり、原因となっている病気を診断・治療できるのは獣医師だけです。
⚠️ こんな症状があれば、すぐに受診を
以下のような変化が見られるときは、緊急性のサインである可能性があります。安静にさせながら、できるだけ早く病院へ連絡してください。
- 口を開けたまま呼吸している
- お腹や脇腹を大きく動かして呼吸している(努力性呼吸)
- 横になることができず、伏せたままでいる
- 舌や歯ぐきの色が紫・白・灰色になっている
- ぐったりして呼びかけへの反応が鈍い
📝 受診のときに獣医師へ伝えると助かること
- 症状に気づいた時刻
- 安静時の呼吸数(胸やお腹の上下を15秒数えて4倍にした数)
- 咳・喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒューという音)の有無
- 舌や歯ぐきの色
- 食欲や元気の変化
- スマートフォンで撮影した呼吸の動画
呼吸の動画は、受診時には落ち着いていることも多いため、自宅での様子を記録しておくと診断の手助けになります。犬ちゃんを興奮させないよう、静かに撮るようにしてください。
老犬に使われる酸素室とは

酸素室とは、ケージや専用のボックスの中に酸素を送り込み、内部の酸素濃度を通常の空気より高めた状態をつくり出す設備のことです。犬ちゃんがその中にいることで、呼吸の負担を減らします。※3
動物病院では「酸素ケージ」と呼ばれる設備が置かれていることが多く、入院中の犬ちゃんに使われています。自宅での使用を目的としたレンタル・購入用の機器も複数のメーカーから提供されており、酸素を発生させる「酸素濃縮器」と専用ケージをセットで使うタイプが一般的です。※6
病院で使われる酸素マスクや鼻に細いチューブを入れる「経鼻酸素投与(カニューレ)」といった方法もありますが、嫌がる犬ちゃんが多く、自宅での長時間管理には向かないことから、自宅療養では酸素ケージを使った方法が選ばれやすいです。※7
酸素室をより安全に使用するために、酸素濃度計や温湿度計を併用することを推奨いたします。
老犬に酸素室が検討される主なケース

酸素室は、呼吸に影響する病気を抱えた犬ちゃんへの支持療法として検討されることが多い設備です。どのような状態のときに選択肢として挙がるのか、代表的なケースをご紹介します。
心臓病・肺水腫
犬ちゃんの心臓病の中でも、僧帽弁閉鎖不全症は多く見られる疾患で、特に体重20kg未満の小型犬での有病率が高いのが特徴です。進行すると心機能の低下から肺に水が溜まる「肺水腫」を起こすことがあり、呼吸が著しく苦しくなります。このような状態では、薬による治療と並行して、呼吸の補助として酸素室が使われることがあります。※2
肺炎・気管支炎
細菌や誤嚥(ごえん)などが原因で起こる肺炎、慢性的な気道の炎症による気管支炎も、呼吸に大きな負担をかける疾患です。高齢犬では免疫力の低下から感染しやすくなることもあり、治療中の呼吸サポートに酸素室が活用されることがあります。※4
気管虚脱
小型犬に多く見られる気管虚脱は、気管の壁が強度を失って扁平につぶれる病気です。一度発症すると症状が元に戻ることはなく、呼吸への影響が大きくなるにつれて、内科的な管理に加えて酸素補助が検討されることがあります。※1
💡 かかりやすい犬種
チワワ、ポメラニアン、トイ・プードルなどの小型犬(トイ種)に多い疾患です。
胸水・腫瘍
胸の中に液体が溜まる胸水や、肺や胸腔内の腫瘍によって呼吸が圧迫されている場合にも、苦しさを和らげるための補助手段として酸素室が用いられることがあります。※4
終末期の緩和ケア
病気の治療が難しくなった段階でも、苦しい呼吸を少しでも楽にしてあげたいというご希望から、緩和ケアの一環として酸素室が導入されることがあります。
これらはあくまで代表的なケースであり、病名だけで酸素室の必要性が決まるわけではありません。必要かどうかは、その犬ちゃんの状態を診た獣医師が判断します。
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酸素室に期待される効果💚

酸素室の中にいることで、犬ちゃんの体にはどのような変化が起きるのでしょうか。
酸素を取り込みやすい環境
呼吸が苦しい状態とは、肺から血液中へ酸素をうまく取り込めていない、あるいは体が必要としている酸素が不足している状態です。酸素室はその環境を改善し、少ない呼吸の動きでも酸素を取り込みやすくすることで、呼吸にかかる負担を和らげることができます。※7※8
呼吸負担の軽減
呼吸の回数が落ち着いてくる、ハァハァという荒い呼吸が減る、横になった状態でも呼吸しやすくなる、といった変化は、酸素環境が整ったことのサインかもしれません。苦しさが減ることで犬ちゃんが休める時間が増え、体の回復を助ける環境が整うことも期待できます。※3
通院負担の軽減
自宅で酸素室を使う在宅酸素療法は、入院の延長として自宅で継続的に呼吸のサポートができるため、繰り返しの通院による犬ちゃんと飼い主様の負担を減らせます。言うまでもありませんが、住み慣れたお家で飼い主様のそばにいられる安心感は、犬ちゃんにとって何より嬉しいことでしょう。※8
酸素室で病気が治るわけではない
酸素室は、呼吸のつらさを和らげ、体が必要とする酸素を届けやすくするための「支持療法」です。原因となっている病気そのものを治す効果はなく、酸素室を使いながらも病状が進行することがあります。※3
たとえば、肺水腫であれば利尿薬などによる治療が、心臓病であれば心機能を保つための内科的管理が、並行して必要です。酸素室はその治療を補助するものと理解しておくことが大切です。
また、高濃度の酸素を長時間吸入し続けることで、「酸素中毒」と呼ばれる状態が起こる可能性も指摘されています。活性酸素が肺や神経に影響を及ぼすことがあるため、高ければ高いほどよいというものではなく、適切な濃度管理が必要です。※5
酸素室を使っていれば安心、ということにはならないということを念頭に、獣医師と連携しながら使用することが何より重要です。
酸素室を使い始めるタイミング

「うちの子にもそろそろ必要かな」と考え始めたとき、どのような場合に検討されるのかを知っておくと、獣医師との相談がしやすくなります。
呼吸の異常が見られたとき
「以前より呼吸が早い気がする」「咳が増えた」「すぐ疲れる」といった変化が続くようであれば、まずは獣医師に相談してください。受診の結果として、酸素室が選択肢に挙がることがあります。
📖愛犬の息づかいがいつもと違う、という違和感を感じる場合は注意が必要です。こちらの記事を参考に必要なら動物病院を受診しましょう🐶💨
退院後の在宅療養として
入院中に酸素ケージを使用していた犬ちゃんが退院するとき、自宅でも引き続き酸素室を使うことを勧められるケースがあります。退院前に使用目的や目標とする状態を獣医師と確認しておきましょう。※8
持病の悪化に備えて
心臓病など進行性の持病を抱えている犬ちゃんの場合、急な悪化に備えてあらかじめレンタル業者を調べておくと、いざというときに落ち着いて動けます。ただし、実際の使用開始はかならず獣医師の指示のもとで判断してください。
酸素室の導入・変更・中止は、飼い主様が単独で判断するものではありません。獣医師とこまめに相談しながら進めることが、愛犬を守るために大切です。
自宅で使用する際の基本✅

自宅に酸素室を置くことが決まったら、安全に使うためにいくつか確認しておきたいことがあります。
獣医師と使用目的を共有する🧑⚕️
何のために使うのか(呼吸の安定、症状の緩和など)、どのような状態になったら使用を見直すかを事前に確認しておきましょう。目的によって、使い方も変わります。どの程度の濃度や時間で使用するかは、必ず獣医師の指示に従ってください。
酸素濃度は高ければ良いわけではない💨
酸素中毒のリスクを踏まえると、必要以上に濃度を上げることは避けたほうがよいとされています。現役獣医師の解説によれば、犬にとって適切とされる酸素濃度は30〜40%程度であり、酸素濃度計を使って実際の濃度を測ることが推奨されています。※9
濃度の設定は使用する機器やケージの大きさ・構造によっても異なるため、具体的な値は獣医師やレンタル業者に確認してください。
温度と湿度に気をつける🌡️
酸素室の内部は熱や湿気がこもりやすく、特に夏場は高温になるリスクがあります。温度計・湿度計をケージ内に設置し、犬ちゃんが快適に過ごせる環境を保つよう心がけてください。温度は23〜26℃、湿度は40〜50%が目安です。換気については、機器の仕様に合わせて適切な使い方をすることが重要です。
⚠️直射日光・エアコンの風ダイレクトはNG
・直射日光はケージ内が高温になりやすい他、酸素濃縮器が過熱されて事故につながることもあるので✕
・エアコンの風が直で当たると、冷え過ぎや乾燥し過ぎになる危険があるので✕
温度・湿度調整のヒント💡
●暑すぎるときは…
①冷房をつける。②凍ったペットボトルをケージの上に置く。③凍ったペットボトルをタオルで巻いてケージ内に置く。
●寒すぎるときは…
①暖房をつける。②湯たんぽを布で巻いてケージ内に入れる。
●乾燥しているときは…
濡らしたタオルをケージ内に入れるか、横穴などに掛ける。
⚠️小型扇風機やヒーターを使用したくなりますが、万が一スパークして火花が散ってしまうと、酸素に引火する恐れがあり危険なのでやめましょう。
火気は絶対に近づけない🔥
酸素が豊富な環境では、通常より火が燃えやすくなります。コンロ、ストーブ、喫煙、ろうそく、線香など、火を使うものを酸素室の近くに置かないよう徹底してください。
緊急連絡先を手元に置く🚨
体調が急変したときにすぐ連絡できるよう、かかりつけの動物病院と夜間・休日対応の病院の連絡先を、酸素室の近くに貼っておくと安心です。また、酸素濃縮器の不具合などが発生した際にも、すぐ対応できるようにメーカーの連絡先も手元に置いておきましょう。
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レンタルと購入のどちらを選ぶ?
酸素室の機器は、レンタルと購入のどちらかを選ぶことになります。それぞれに向き不向きがあるため、おおまかな目安をお伝えします。
レンタルは初期費用を抑えられ、短期間の使用や、まずは試してみたいときに向いています。一方で、長期になると総額が購入を上回ることもあります。購入は初期費用がかかるものの、長期使用では割安になることがあり、手元に置いておける安心感もあります。
どちらを選ぶかは、使用期間の見通し、犬ちゃんの体格に合ったサイズ、サポート体制など複数の条件を考慮して決めましょう。
ハピネスおすすめの酸素室3選🫧
●O2 pet(オーツ―ペット)|株式会社オーツ―チャージ
人用酸素カプセルを国内製造し、医療機器の国際規格「ISO 13485」を取得しているメーカーだから安心の品質。初期費用0円、月額だけで始められるのも嬉しい。介護疲れのある飼い主様も一緒に使用できる人用のアタッチメント付き。
【注意点】・大型犬にはケージが小さい ・12ヵ月プランが最安でお得だが途中解約はできない
●酸素ハウス|テルコム
全国5,800件を超える動物病院とのつながりがある大手の酸素室メーカー。設置サポートもあるので機会が苦手な人も安心。継続メンテナンスを大切にするためレンタルにこだわり有り。
【注意点】・大型犬が入れる専用ケージがない ・基本料金、月額、配送料なども含むと初期費用が高くなる
●ペット別レンタル酸素室セット|ユニコム
レンタル、販売どちらも対応しており大型犬用の大型ケージもある。年中無休(9:00~18:00)で問い合わせ可能で安心のサポート体制。月単位での契約が可能。
【注意点】・ケージはレンタルでも購入必須。
よくある質問
- Q一日中入れっぱなしでも大丈夫ですか?
- A
使用時間は犬ちゃんの病状や酸素室の使用目的によって異なります。具体的な使用時間については獣医師・レンタル業者に確認してください。また、「入れっぱなし」と「放置」は別のことで、入れている間も定期的に様子を確認することが大切です。
- Q嫌がって入らない場合はどうすればよいですか?
- A
慣れていない場所や密閉空間を嫌がる犬ちゃんは少なくありません。扉を開けた状態で置いておく、飼い主様のにおいのついた毛布を入れる、最初は短時間から、など少しずつ慣らす工夫をしましょう。
- Q食事や水、トイレはどうするの?
- A
酸素室での食事や排泄は、犬ちゃんの状態に合わせて行います。酸素室内でできるようにするなら、広めのものを準備しておきましょう。ただし、呼吸が苦しいときの食事は誤嚥(ごえん)による病状悪化のリスクがあるため、無理は禁物です。
酸素室の外で行う場合は、苦しくならないようにできるだけ手早く済ませられるのが理想です。その際、酸素室の扉を開けっぱなしにすると室内の酸素濃度が低下してしまうので注意しましょう。
実施後は犬ちゃんの呼吸が苦しそうになっていないか観察することが大切です。対応に迷ったときは、獣医師に相談しましょう。
- Q酸素室で回復しますか?
- A
酸素室は呼吸の補助をする設備であり、病気を治すものではありません。「一時的に落ち着いた」と思っても「回復した」わけではありませんので、独断で使用をやめるのではなく、獣医師と相談しながら調整しましょう。
- Q留守番中でも使えますか?
- A
状態が安定していれば可能ですが、外出はなるべく短時間で済ませるように心がけ、ペットカメラなどで離れていても様子を確認できるようにしておきましょう。
まとめ
酸素室は、呼吸が苦しい犬ちゃんの体に酸素を届けやすくし、その負担を少しでも和らげるための設備です。心臓病・肺水腫・気管虚脱・肺炎・終末期の緩和ケアなど、さまざまな場面で選択肢に挙がりますが、あくまでも原因疾患の治療と並行する「支持療法」であることを忘れないでください。
呼吸が苦しそうなときは、酸素室を探す前に、まずかかりつけの動物病院へ連絡を。酸素室の使用開始・中止・変更も、獣医師との相談なしに自己判断しないことが、愛犬を守る大切な一歩です。
どうか焦らず、獣医師とゆっくり相談しながら、その子にとって一番穏やかで優しい選択を見つけてくださいね。
【参考文献・情報】
※1 さだひろ動物病院「気管虚脱の残酷な現実:進行性病態の真実と、飼い主に求められる論理的選択」
※3 ライト動物病院「犬の呼吸が苦しいとき|ターミナルケアと酸素室」
※4 城下幸仁(相模が丘動物病院 呼吸器科)「高齢犬・高齢猫の呼吸器 まるごと一冊 高齢動物の疾患」
※5 横浜みどり動物医療センター しょう動物病院「酸素中毒とは?酸素濃度は高ければいいわけではない!」
※6 神戸メディケア「ペットの酸素ケアハウス・酸素ルームについて」
※7 城下幸仁(相模が丘動物病院 呼吸器科)「酸素の補給と加湿」


