老犬の呼吸が早い・息が荒いのはなぜ?正常な息づかいとの違いと受診の目安

老犬の呼吸が早い・息が荒いのはなぜ?正常な息づかいとの違いと受診の目安

愛犬の息づかいがいつもと違う、ハァハァが続いている。
そんな変化に気づいて、不安な気持ちでこの記事を開いてくださった飼い主様もおられるかもしれません。

呼吸の異変は、老犬の体が発する大切なSOSサインのひとつです。
「年のせいかな」と思いながらも、やっぱり気になってしまう。そのご心配は、けっして思い過ごしではありません。
この記事では、正常な呼吸との違いの見分け方から、受診までに飼い主様ができることまで、順を追ってご説明します。

まず確認|すぐに受診したい呼吸のサイン

「警告」の札を出す獣医師

まず、以下のサインのうちひとつでも当てはまる場合は、記事を最後まで読む前に動物病院へ連絡してください。

⚠️ こんなサインが見られたらすぐ病院へ

  • 口を開けたままハァハァと荒く呼吸している
  • 胸やお腹を大きく波打たせて、一生懸命に呼吸している(肩で息をしている)
  • 涼しい室内で安静にしているのに、呼吸が速い状態が続いている
  • 伏せたまま動かない、または前脚を突っ張って座り込んでいる
  • 舌・歯茎・唇の色が青みがかっている、または白っぽい(チアノーゼ)
  • 呼吸のたびにゼーゼー・ガーガー・ヒューヒューといった音がする
  • 横になれず、楽な姿勢を探してソワソワし続けている
  • 意識がぼんやりしている、呼びかけへの反応が鈍い

これらは呼吸困難の「苦しいサイン」です※1。なかでもチアノーゼ(粘膜の変色)は緊急性がとくに高く、体内の酸素濃度が急激に低下しているおそれがあります※6。「少し様子を見よう」と判断するより、まず病院に連絡することを優先してください。

犬の正常な呼吸と異常な息づかいの違い

成犬が安静にしているときの正常な呼吸数は、1分間に10〜35回程度です。ただし体格による個体差があり、小型犬はやや多くなりやすく、大型犬は少なくなる傾向があります。

異常な息づかいの目安として、涼しい室内で安静にしているのに1分間の呼吸数が40回以上ある場合や、明らかに普段より回数が多い場合は受診の検討が必要です。また安静にしているのに速い呼吸が30分以上続く場合も、異常のサインと判断してください※1。

回数だけでなく、以下の「質の変化」も一緒に確認するとより正確に状態を把握できます。

  • 姿勢:いつもより上体を起こしている、横になれない、頸部を伸ばすように上を向いている
  • 粘膜の色:舌や歯茎がいつものピンク色か、青みや白みがかっていないか
  • 呼吸音:普段は聞こえない音(ゼーゼー・ガーガー・水が混じったような音)がしないか

老犬はもともと症状が出にくいことがあります。「少し息が速い気がする」という程度の変化でも、普段の様子と違うと感じたら、軽く見ないようにしましょう。

老犬の呼吸数の測り方|寝ているときに確認

呼吸数は、起きているときよりも「ぐっすり寝ているとき」や「リラックスして横になっているとき」に測るのが最も正確です。

測り方はシンプルです。犬ちゃんが眠っているときに、胸や腹部が上下する回数を15秒間数え、その数を4倍にすると1分間の呼吸数になります※8。(10秒間数えて6倍にするのでも構いません)
このとき、胸やお腹が「吸って・吐いて(膨らんで・戻る)」の1セットを1回と数えてください。正確に回数を把握するための大切なポイントです。

💡 測定例(計算の仕方)

15秒間に10回の動きを感じた場合 → 10 × 4 = 40回/分

心臓病などが原因で肺水腫などの重篤な状態に近づいている場合、この「安静時呼吸数」がまず最初に増加することがわかっています※2※5。
日頃から寝ているときの呼吸数を記録しておくと、小さな異変にいち早く気づくことができます。日時・室温・姿勢・回数をメモしておけば、受診時に獣医師へより正確に伝えられるでしょう。

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重篤な病気以外で呼吸が早くなる原因

お散歩で息が上がるフレンチブルドッグ

呼吸が早くなるすべてのケースが病気によるものではありません。以下のような生理的・環境的な原因も考えられます。

老化(加齢)による影響

筋力や心肺機能の衰えから、若い頃は平気だった軽い運動や散歩でも息切れしやすくなります。これ自体は自然な老化現象です。しかし「老化のせい」と決めつけて様子を見ることで、背景にある病気の発見が遅れるケースもあります。呼吸の変化は丁寧に観察し、普段との差を記録しておきましょう。

体温調節(パンティング)

犬が暑いときや運動後に口を開けてハァハァする生理現象です。犬は人間のように全身で汗をかけないため、このパンティングで体温を下げています※1。
涼しい場所に移動しても治まらない場合は、病気の可能性を疑う必要があります。

不安・恐怖・精神的なストレス

雷や花火の音、車での移動、急な来客、気圧や天候の急変などをきっかけに、交感神経が優位になって呼吸が一時的に荒くなることがあります※1。愛犬の様子から「怖いことがあったかな」と想像してあげると、原因に気づきやすくなります。

はぴ太 11さい
はぴ太 11さい

カミナリは大の苦手ワン💦ゴロゴロぴしゃーんって響いて怖いワン🐾
ぼくは、ぶるぶる震えて息もあがってしまうワン💦

身体の痛み

どこかに痛みを感じているときも、痛みに耐えるために息が荒くなります。あまり動きたがらない、震えているといった様子が伴う場合は、痛みの可能性を考えてください※1。

認知機能の低下(認知症)

認知症になると、自分の意思で行動を止めることが難しくなり、ハァハァと息を荒くしながら部屋を徘徊し続けたり、一定方向に回り続けたりすることがあります。

呼吸が早いときに考えられる病気

レントゲン台に乗るヨークシャテリア

老犬で呼吸の異常が続く場合、呼吸器・循環器の深刻な病気が隠れている可能性があります。
病院での検査なしに病名を特定することはできませんので、以下はあくまで代表的な原因の例としてご覧ください。

僧帽弁閉鎖不全症・心臓の病気

シニア小型犬に非常に多く見られる進行性の心臓病です。心臓の弁が正しく閉じずに血液が逆流し、初期は運動時の咳から始まり、悪化すると呼吸困難に至ります※2。持病として抱えている犬ちゃんは特に、呼吸数の変化を日々記録しておくことが大切です。

肺水腫

心臓病の悪化(左心不全)などが原因で、肺に液体がたまり酸素を取り込めなくなる命に関わる状態です※2。陸上にいながら溺れているような深刻な呼吸困難が起き、一刻を争う緊急性があります。

気管虚脱

気管がつぶれて空気の通り道が狭くなる進行性の病気で、小型犬に多く見られます。息を吸うときにガーガーとガチョウのような音を伴う咳やチアノーゼが起こります※1。

そのほかの原因

肺炎、胸水(肋骨の内側に液体が溜まり、肺が広がらなくなる)、貧血、熱中症なども呼吸を急激に悪化させます※1。老犬は複数の病気を同時に抱えていることも多く、「どれかひとつ」と決めつけず、必ず動物病院で診てもらうようにしましょう。

受診までに飼い主様ができること💚

動物病院の待合室で愛犬のミニチュアピンシャーを撫でる男性

愛犬の呼吸が苦しそうなときは、まず動物病院に電話して状況を伝えてください。治療の遅れが生死を分けることがあります。そして、受診までの間も、飼い主様にできることはあります。

最も楽な姿勢を保つ

うつぶせが一般的に呼吸しやすい姿勢とされています※3。抱っこする場合は胸やお腹を圧迫しないようにし、首と背骨が水平になるよう優しく支えてあげてください。

涼しく落ち着いた環境に移す

エアコンが効いた室内や風通しの良い日陰に移動し、ケージ内の温度にも注意します。熱中症が疑われる場合は、常温の水で体を濡らすか、タオルで巻いた保冷剤を首や脇の下にあてる応急処置を行います※1。

興奮・運動を完全に止める

散歩を続けない、走らせないのはもちろん、首輪やハーネスも外して胸まわりの圧迫を解いてください。愛犬が少しでも楽に呼吸できるよう、静かな環境をつくってあげましょう。

様子を記録する

呼吸の様子をスマートフォンで動画撮影しておくと、病院でのスムーズな診断に役立ちます。「いつから」「どんな状況で」「呼吸数はいくつか」をメモしておきましょう。

有毒なものを遠ざける

チョコレート・タマネギ・キシリトール・ブドウなどは犬にとっては猛毒です。摂取すると酸素が取り込めなくなる、心拍の乱れを引き起こすなど、深刻な状態を招くことがあります。近くにある場合は、犬ちゃんの届かない場所に遠ざけてください※7。

呼吸が苦しそうでも避けたいこと

よかれと思った行動が、かえって愛犬の状態を悪化させることがあります。愛犬のために何かしてあげたい気持ちはよくわかりますが、これだけはしないように覚えておいてください。

はぴ太 11さい
はぴ太 11さい

あきらかにしんどそうなときは、病院に連れて行ってほしいワン🐾
病院こわいけど、元気になれるなら頑張るワン🐾

「様子を見る」という判断

チアノーゼや呼吸困難は、自然に治まるような軽い症状ではありません。放置すると急激に悪化して命に関わります※6。「もう少し待てばよくなるかも」と思ってしまう気持ちはわかりますが、ここは迷わず病院に連絡する判断をしてあげてください。

無理に動かす・体を揺する

呼吸が苦しい犬ちゃんを揺さぶったり無理やり立たせたりすると、心臓や肺にさらなる負担がかかります。呼吸がしやすくなるように、うつぶせの姿勢ができるようサポートしてあげましょう。

熱中症のときに氷水をかける

熱中症が疑われる場合でも、氷水を直接かけることはしないでください。皮膚の血管が急収縮して体内に熱がこもる原因になります。常温の水を使い、風をあてて気化熱で体温を下げるようにしましょう※1。

酸素室の濃度を自己判断で変える

自宅でレンタル酸素室を使用している場合、酸素濃度が高すぎても犬に危険を及ぼします。自己判断での濃度調整は避け、必ず獣医師の指示に従ってください※1。

酸素室が必要かどうかは獣医師が判断する

呼吸の負担を和らげる手段として、酸素濃度を高めた「酸素室(酸素ハウス・ケージ)」を自宅で活用する方法があります。

酸素室は延命だけを目的とするものではなく、愛犬が自分で呼吸するつらさを和らげ、住み慣れた家で穏やかな時間を過ごすためのものです。「病院に連れて行くのがかわいそう」ではなく、「苦しさを少しでも減らしてあげたい」という気持ちに応えるための選択肢のひとつです。

導入が必要かどうか、どのような濃度・温度・湿度に設定するかは、犬の病態を把握している獣医師が判断します※4。購入の他、専門のレンタル会社に依頼すれば、短期間からでも設置することができます。設置後の管理も、主治医と業者に相談しながら進めましょう。

まとめ

老犬の呼吸は、体の状態を映す大切なバロメーターです。

「なんとなくいつもより息が速い気がする」「最近ハァハァしている時間が増えた」
そんな小さな変化を、年齢のせいと片づけずに記録してほしいと思います。毎日寝ているときの呼吸数を数える習慣をつけるだけで、異変にいち早く気づける可能性がぐっと高まります。

呼吸が苦しそうなサイン(口を開けたままの呼吸・肩で息をする・粘膜の変色・横になれない)が見られたときは、すぐに動物病院へ電話してください。緊急時に判断を迷う時間は、犬ちゃんにとってとても貴重です。

あなたの「いつもと違う」という気づきが、犬ちゃんを守る第一歩です。どうか一人で抱え込まずに、まずかかりつけの先生に連絡してみてくださいね。

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【参考情報・文献】

この記事の執筆者

執筆者

老犬介護
ハピネス 編集部 Y・A

愛犬を5匹見送った経験を持ち、老犬介護の大変さと尊さをよく知る人物。今もシニアの小型犬との快互(愛犬も飼い主も快適な介護)を実践しながら学びを深め、同じ悩みを抱える飼い主様への情報発信に努めている。動物保護ボランティアへの支援も行っている。